現国府4~6丁目、貝地2丁目。正徳年間に従来の「馬之地」を佳字佳名をもって冨田と改める。この際府中四組の「馬之地組」も「冨田組」となる。近世中期以降府中13町の1つ、冨田組に属する。

ささら

 冨田町が有する全町唯一の祭礼風流で昭和56年(1981)に石岡市有形民俗文化財、平成8年(1996)に茨城県無形民俗文化財に指定されている。祭礼期間中は土橋町、仲之内の幌獅子とともに大神輿の露祓を務め、神幸祭、還幸祭にのみ巡行し、奉祝祭には参加しない。かつては近世府中の祭礼に出ていたもので常陸國總社宮の祭礼に継承されたと考えられる。

 ささらは三匹の獅子舞であり、獅子頭をつけた三匹の人形をそれぞれ2本の棒によって操る。一般名詞の「ささら(簓)」とは竹や木の細い棒を重ねた道具のことで、木同士が擦れる音から来た名称と考えられる。ささらを操ることを「ささらを振る」と称し、かつては技の流出を恐れて家の相続人(長男)でないと許されなかったという。

 三匹の獅子は老獅子、雌獅子、若獅子と呼ばれ、老獅子と若獅子には二本の角があり、若獅子の角には金箔が貼られている。三匹の獅子はいずれも胴体が竹籠であり、衣装はもちろん手や頭などが取り外しできる。保管の際には部品ごとに分解されて箱の中に収められている。ささらの獅子頭は舞う人が来ても長持や箱から出さないと中で踊ったり暴れたりするとか、保管した家に病人が絶えないなどと言われたため、普段は冨田町の中心部にある北向観音堂に保管されている。なお、この観音堂はかつては總社宮の神宮寺の観音堂であったとされる。9月に入ると冨田町ささら保存会の会員により「ささら箱開け式」が行われ、獅子頭に神饌などを供えた後に組み立てが始まる。組み立てられたささらは祭礼まで観音堂に置かれている。

 ささらの製作年代は不詳であるが、屋台前の2か所にある擬宝珠に「嘉永二歳酉六月日冨田町」と刻印されており、その年代がうかがえる。

 三匹の獅子は屋台の中で操られる。屋台は幅9尺4寸、高さ8尺、奥行き7尺8寸の大きさで、以前は紺地に白字で「冨」一文字だったが現在は紺地に赤丸、その中に八咫烏(ヤタガラス)が染められた幕が張り巡らされ、さらに注連縄、紙垂が飾られる。かつての屋台は4人くらいで担いでいたが、現在は車輪が付き、綱で引くようになっている。『石岡富田のささら』によればささらは京都の公卿である烏丸家から来たものと言われており、幕の烏はその根拠の一つとされる。

 囃子は太鼓、笛で構成され、巡行中は「通り」という曲を演奏しながら進み、三匹の獅子がときおり360度回転しながら舞う。神幸祭の際、神社に到着したささらは屋台から出て拝殿入口前で三匹踊りを舞い、所定の位置に待機する。露祓町挨拶の儀で神職の祓いを受けた後、神霊遷しで御分霊を先導。大神輿に御分霊が遷った後、最初に奉納の三匹踊りを舞い、その後に土橋町、仲之内の獅子舞が続く。出御し行列の先頭を歩いた後、仮殿に近づくと再び屋台から出て仮殿内で三匹踊りを舞う。還幸祭の際にも仮殿に到着すると屋台から出て三匹踊りを舞い、露祓町挨拶の儀、仮殿発輿祭を経て巡行、神社に到着すると屋台から出て土俵上に置かれた大神輿に対して三匹踊りを舞う。さらに御霊遷し後御分霊が本殿に入る際に拝殿前で三匹踊りを舞う。

 平成30年(2018)に三匹の獅子に万が一事故があっては神事に差し支えるとの配慮から準備していた「控え」のささら一組が製作完了し、同年の祭礼前の9月2日に總社宮で魂入れのための清祓式が行われた。

老獅子


獅子頭の大きさは高さ21cm、幅27cm、奥行きの長さ47cm。黒い角が特徴である。

雌獅子


獅子頭の大きさは高さ18cm、幅20cm、奥行きの長さ40cm。角がないのが特徴である。

若獅子


獅子頭の大きさは高さ19cm、幅25cm、奥行きの長さ43cm。金色の角が特徴である。

小屋

擬宝珠

屋台前に取り付けられた擬宝珠の刻印。右側は「嘉永二歳酉六月日冨田町」とあり、左側は「冨田町橋本權右エ門」と読める。

袢纏

提灯

山車全体

2層造り。山車には風神雷神、四神、阿吽狛犬の彫刻。賛同により寄付を集め建立、その後町内に寄贈されたもの。

[材質]
ケヤキ
[作成年代]
平成11年(1999)
[製作者]
小池建設工業
[寸法(縦×横×高さ)]
4500×4000×5100mm
[祭礼時以外の保管場所]
山車小屋

山車人形「楠木正成」

[材質]
キリなど
[作成年代]
平成11年(1999)
[製作者]
川崎人形
[寸法(高さ×幅)・重量]
1650×900mm・35kg
[祭礼時以外の保管場所]
公民館倉庫

獅子頭

[材質]
ケヤキ
[作成年代]
不明
[製作者]
不明
[寸法(縦×横×高さ)・重量]
660×660×700mm・28kg
[祭礼時以外の保管場所]
公民館倉庫

獅子全体

[材質]
ヒノキ
[作成年代]
昭和45年(1970)
[製作者]
若林建設
[小屋寸法(縦×横×高さ)]
4000×2000×3000mm
[祭礼時以外の保管場所]
公民館倉庫

袢纏

提灯

会所